
日本一標高が高い林道として知られる,長野県川上村と山梨県(旧)牧丘町を結ぶ峰越林道。
その林道を山梨県側から入り,途中で荒川林道に外れてほどなく行くと乙女高原はある。
そこは見渡す限りの高原ではなく一時間もあれば歩き回れる程度の広さだ。
案内板には昭和27年から平成12年までの48年間,県営のスキー場だったと記されていた。
どうりで周囲の森からそこだけえぐり取ってできたような草原だ。
つまり人の手によって切り開かれた草原に,自然のお花畑が拡がったのである。
標高1700mに位置する乙女高原には亜高山性高茎植物が生い茂る。
その大半が腰よりも高く,短い夏を謳歌するかのように花を咲かせていた。
けっこう気になったのがハチの羽音で,その大きさから小ぶりのクマバチだと思ったが,注意深く見てみるとマルハナバチであった。
どちらも滅多なことでは刺さないが,ハチの羽音は人の本能に危険信号を送るのだ…

鳥や獣の類いはオスの方が派手で,きらびやかなものが多い。
メスの気を引くためだと言われている。
それに対して植物は,受粉を幇助してくれる虫こそが誘い出す対象となる。
そのために思い思いの花を咲かせたり,様々な工夫を凝らすのだ。
例えば…
人の目には紫や黄にしか見えない花の色も特定の虫には蜜の在処が識別できるように色づいたり,蜜までの深さを,その虫の舌の長さに合わせてみたりといった具合だ。
これは同じ花を巡ってもらった方が受粉が確実だからである。これを虫媒花という。
蜜の独占提供と花粉の指定媒介という…いわば特定の虫と契約を取り交わした花と言えよう。
ところで,マルハナバチの習性は少々変わっている。
蜜を集める花の種類に専属を設け,仲間内で役割分担をするのだ。
まるで,飛込営業する先を営業マンごとにジャンル分けしているみたいだ。
こうすることにより二度手間を防ぎ,効率よく蜜の採取を行っている。
だから数が減った花は集中的に媒介を助けてもらい,減少に歯止めが掛かる。その結果絶滅から救われる。
すなわちマルハナバチが生息するお花畑は,数多くの花の繁栄が見られるというわけだ。
それはそうと,いったいマルハナバチたちは自分が目指す花の種類をどうやって決めているのだろう?
まさか見栄えで選んでいるとは思えないが,もしもそうならばどんな花がお好みであろうか?
私の写真の腕前では十把一絡げのようだが,実際の花々を前にすると… 確かにどれにしようか迷ってしまうのだ…
